帰った瞬間戻りたいと思うほど濃い島時間
今回島での主な就業内容はカフェの営業でした。私は誰かにものを販売することが初めてだったので最初は何をしたらよいのか全く分からない状態から始まりました。ですが、同じ就業先の島キャン生2人と就業先のお店のかたにたくさん助けていただき最終的には後半の1週間一人でもお店を回せるようになりました。どうやったら多くのお客さんに来ていただけるのかを真剣に考えてもともとあった看板の設置位置をずらしてみたらいいのではないかと提案させていただきました。えらぶでの島民の移動手段は基本的に車です。カフェはえらぶの中でもかなり交通量の多い交差点に面する土地でやらせていただいたのですが、交差点側からでは車に乗っている人は看板を見ることが難しいと思ったのです。実際に看板の位置を変えた後お客さんに「もともと看板があまり見えていなかったから位置を変えたのは正解だよ」と言っていただき、心なしか車に乗っている方がカフェの方を見てくださる回数も増えたと感じました。また、お客さんが知り合いや親戚、後輩などを連れてきてくださり、カフェ営業を通して島の方との縁も広がりました。そうして来てくださった方とお話させていただいたりして、島の様々なことをお聞きしたりすることもでき、どんどん島とのつながりが生まれていったように感じます。学校が休みの日には小中学生も来てくれて子供たちの明るさのパワーにも気づかされました。
私が2週間の島キャンを通して得られたやりがいは沢山の人との繋がりができたことと、カフェ営業をする中で沢山の人の笑顔を見ることができたことです。
沖永良部島にはたくさんのものが詰まっています。それは語りつくせないほどたくさんありますが、その中でも特に私の心に響いていることを3点書かせてください。
最初に沖永良部島の島としての特徴を書かせていただきます。沖永良部島は奄美群島の一つで徳之島と与論島の間に位置します。どちらの島も沖永良部島の南端や北端からでなくても簡単に目視できるほど近いですが(住吉海岸からは沖縄本島北部も見ることができました)、特に徳之島とは全く文化が違うそうです。鹿児島県でありながら沖永良部島は琉球文化の影響を大きく受けています。シーサーが家の前にあったり、沖縄そばを食べられたり、アンダギーやちんすこうといったものが売られていたりします。ですが、同じ奄美群島でも奄美大島と徳之島は朝鮮半島の影響を受けていることを伺いました。島同士の交流は少なく他の島に行くとしても中高生の部活の大会で行くぐらいなのだそうです。因みに与論島とはお酒の飲み方が異なっているというお話も聞きました。島には甘くておいしい島バナナ、奄美群島でしか作れない黒糖焼酎、特産物のきくらげやジャガイモ、黒糖といった島ならではのものも沢山ありました。えらぶで有名なゆりはGW頃見ごろを迎えるそうです。
2点目は人の温かさです。今回の島キャンで沢山の人に出会いそして出会ったすべての人に支えられていたなぁと感じます。いつでも周りにいる人は明るく、そして島のいろんなことを教えてくださいました。何度もお店に来てくださったり、観光に連れて行ってくださったりしたかたもいて感謝しかありません。島で会う人は基本的に親戚と知り合いというお話を聞いた時にはびっくりしましたが、長年島での付き合いがある人たち同士はみんなお互いのことを理解していて、島ならではの人間関係だと実感しました。ゆったりと流れる島の時間の中で沢山の人と出会えて過ごせた2週間はかけがえのないもので、自分もこの島で受けた優しさを与えられる人になりたいと思います。
最後に、島はすべてがいいものと片付けるには無視できない問題もあります。特に人口減少、台風による被害、都会とは違う医療などです。今日多くの場所で人口減少が起こっているように沖永良部島も例外ではないです。高校は島内に1つしかなく中学卒業とともに島を出てしまう子供は少なくないそうです。移住者も多くないという事をお聞きしました。また、島外との交通は船と小型の飛行機のみで台風が直撃すると両方が止まってしまいます。貨物は殆どが船で運ばれているため台風の前後何日もものが届かないこともあるそうです。医療面においては島内に病院はありますが重症のときは奄美・沖縄・鹿児島のどこかに運ばれるそうです。しかし台風などでドクターヘリが飛べなくなるといったこともあるため、島で出産することは難しいとおっしゃっていました。また、少しの病気やケガでは病院に行きにくいという実情もあるそうです。こうした、生活する上での課題はすぐに改善するのが難しいのも現状です。
温かい人、どこまでも透き通った何色もの海、水平線に沈む真っ赤な夕日に夜空一面の星空……
えらぶは都会ではそう簡単に味わえないたくさんの魅力であふれていました。2週間で何回も夕日を見に行きましたが、どこから見る夕日も何度見ても胸打たれました。そして島ならではですが基本的にまっすぐ進めばどこにいても海に辿り着きます。青色のただ、青といっても決して一色ではない青色の海がどこまでも広がっています。そしてその海の中では陸からも見ることのできるほど大きいウミガメやたくさんの魚たちが生きています。さらに、島には日本一のガジュマルや東洋一の鍾乳洞といった観光スポットもあります。ガジュマルのある国頭小学校で夜、見上げて両目にとびこんできた星空は圧巻でした。
こうした沢山の魅力があるのにも関わらず、沖永良部島はお隣の与論島や沖縄、奄美と比べて観光客も少なくTHE観光地という島ではありません。それはいったいなぜなのか。その理由は勿論もっと数値的な部分を調べなくては分からないと思いますが、私はえらぶがそれほど観光地化していない島だからこそ感じられる、島の本来の姿が見える場所なのだと思えてなりません。この2週間多くの方とお話させていただいて沢山の考え方があると身をもって知りましたが、ずっと島で生まれ育った人も、島で生まれ進学や就職のために今は島を出ている人も、島外で生まれ育ち島に移住した人もみんな島が大好きで島を大切に思っているのだと伝わってきました。そのうえで島にいる人がより暮らしやすい場所を作っていこうと考え動いています。そのためか、島の多くの人が観光のための営業はしていないという事にも気づかされました。基本的にお店に行っても島の人が沢山いて、就業先のささがわに来るお客さんも観光客よりも島の人が多かったように思います。海やパンフレットに載っている観光ポイントに行っても誰もいないという事は珍しくなく、だからこそ島で出るごみは殆ど落ちておらずとても綺麗で、静かに島を楽しめます。人が多くないからこそそこでたまたま出会った人とは縁が出来ていくのだと思います。都会では他人に対して干渉しないことが殆どです。それがいいのか悪いのかは賛否両論あると思いますが私は島のような、そっと見守ってもらえる温かさもいいなぁと感じました。
えらぶに移住されたかたで他にもいくつかの島に行ったことがある人とお話をさせていただいたとき、どの島にいくにも観光地化される前に行かないとだめだよと言われました。観光地化されることで生じる島としてのデメリットは住民の生活環境が悪化したり、自然が壊されたり、経済損失が生まれたりといくつもありますが、それ以上に行く側にとっても島の魅力が感じにくく満足度が落ちてしまうなどのデメリットがあるのだと思います。島で暮らす人にとっても島を訪れたいと思う人にとってもよい島であり続けることの難しさを痛感しました。
2週間半私の周りを包んでいた、えらぶの温かい空気は地元に帰ってからもずっとずっと忘れられないものとなりました。いつかまたこの島で出会った人たちと会えるよう精進し続けたいと思います。この夏沢山のものを与えてくれた沖永良部島に感謝です!