徳之島での2週間
東京での普段のアルバイトと徳之島での就業体験を比較しながら考えていきたいと思います。普段は、誰もが一度は食べたことのあるファーストフード店で接客の業務を行っています。そこでは自分のシフトの時間になるとタイムカードを切り、終了の時間になれば仕事を切り上げて退勤をする、という当たり前のサイクルがあります。私のアルバイト先だけでなく、ほとんどの飲食店がそのような仕組みを持っていると思います。私にとってアルバイトとは私生活が満たされた上で行うものであり、「はたらく」こととそれ以外のことを完全に切り離して考えていました。
一方で徳之島での就業は「はたらく」こと自体が生活の一部に組み込まれているように感じました。私の就業先は徳之島サンセットリゾートという、家族経営をされているホテルでした。ここでホテルのオーナーの方のとある一日をご紹介します。5時半ごろ、お客様の朝食バイキングが始まる前に就業がスタートし、バイキング終了後に朝ごはんを食べお客様の体験ダイビングに連れていき(多い日には一日3回海に潜るそうです)夕食の準備を行い、レストランの閉店後の21時以降に夜ご飯を済ませるというものです。朝は早く、夜も遅い仕事を365日休むことなく続けているオーナーを本当に尊敬しています。島での暮らしは、都会の喧騒から逃れることのできる穏やかなものだと思いますが、家族経営のホテルでの一日の生活は非常に忙しくプライベートの時間も満足に確保することができないような多忙な毎日だと思います。しかしその中でもオーナーを中心に協力し合いながら活気のある職場で2週間働かせていただいたことに本当に感謝しています。
私は今回の島キャンに参加するにあたり始めて離島に訪れました。徳之島は普段私が生活する東京での暮らしとは全く異なるもので、島の方々が当たり前だと思っていることでさえも新鮮で刺激を受ける毎日でした。東京に帰ってきた今でも、徳之島での出来事をふと思い出したり、写真を見返すたびにいつでもあの素敵な記憶が鮮明によみがえってきます。
島と東京の様々な違いについて述べていこうと思います。まず初めに私が今回島キャンに参加することになった経緯は、昨年私の友人が島キャンに参加した際の話を聞き感銘を受けたからです。参加前は楽しみな気持ちも反面、離島に対する漠然とした不安もありました。東京の便利な暮らしが体に染みついている私にとって、コンビニが徒歩圏内にないことや電車がないこと、よく行くファーストフード店がないことなど挙げだしたら切りがありませんが不便な2週間になるのではないかという心配がありました。しかし実際に徳之島で2週間生活をしてみると、その不便さが全く気にならなくなり、むしろ東京での楽しみ方とは全く別の時間の過ごし方があることがわかりました。
1つ目の違いは「あそび方」です。私の場合東京で「あそぶ」となると事前にSNSで調べたおいしいご飯を食べに行ったり、テーマパークに行ったり、映画を見たり、買い物をするという候補が出てきます。一方で徳之島で「あそぶ」となると、砂浜で花火をする、コンビニ買い出しの道中のドライブ、ナイトハイク、砂浜に寝っ転がりながら星空を眺める、ダイビングをする、漁港に行き釣りをするといったものでした。お金を使わなくても十分に楽しめる島での遊びは私の心を満たしてくれました。
2つ目の違いは「人とのつながり、人情味」です。これは離島ならではの特性なのかもしれません。東京で人と全く関わらずに生きていくことは可能かもしれませんが、島においては周囲の人との協力や関係性を持つことが非常に重要であると思いました。私たちが島に到着した日に、その日の夜ご飯の買い出しを行いたいと思い、就業先の方に近くのレンタカーについて質問をしたところ、車で近くのスーパーまで送り届けてくれるということがありました。出会って間もない相手に対しそこまでの思いやりをもって接してくれたことに感動したことを今でも覚えています。他にも、就業終わりに車でアマミノクロウサギ(奄美大島と徳之島にのみ生息するウサギです)を見に連れて行ってくれたこともありました。時間や手間を惜しまずに思いやりをもって接してくれた島の人たちに感謝しています。私も受け取った優しさを周囲の人に還元していきたいと思います。
3つ目の違いは「時間の流れ」です。東京では目まぐるしく毎日が過ぎ時間に追われることが多いですが、島での2週間はゆったりとした時間の流れを感じることが出来ました。もちろん就業中は業務が忙しく毎日あっという間に一日が終わる、ということも珍しくはありません。しかしふと帰り道に夜空を見上げると満天の星空が広がっていたり、日の入りの時間になると空がきれいに色づき心安らぐ時間がありました。自然とより近い場所で暮らしているからこそ、自然の恩恵をたっぷりと受けることができるのだと思います。
東京と島それぞれどちらにも魅力があり、優劣をつけることは難しいですが、今回島キャンに参加したことで島の魅力を肌で感じ取ることができました。行く前は縁もゆかりもない土地でしたが、今では私にとっての第二の故郷のような大切な場所です。