島キャン実施レポート

インターン報告

2022年夏 新上五島町
くらしの学校えん
9/13~9/26
中央大学/経済学部  小島凜
えんでくらしを学ぶ
働き方の選択肢
一緒に働いた友達が撮ってくれたえんの日常

初めに、えんでの1日を紹介します。

朝6時10分に起床し、10分で準備をします。留学生の子どもたちと朝ごはんの支度をします。朝ごはんで食べるごりりん(事業所の小野敬さん、えんでのお父さん)お手製の鹿ベーコン、えんで作られた梅干しは絶品でした。学校に行く子どもたちに手を振って、食器を洗い、洗濯物を干します。次は動物(ニワトリ、ウサギ、カメ、ヤギ、ポニー)のお世話をしに行きます。ニワトリには、本来廃棄となるはずのおからや、パンの耳、残飯などを与え、卵を産んでいるか飲み水が減っていないか確認します。ウサギにはヨモギを収穫して与えたり、ヤギやポニーにえんの天塩を与えます。ここで私が一番大変だと感じたのは、ヤギを移動させることです。伸びすぎた雑草を食べてくれるヤギさんたちですが、周囲に雑草がなくなっていると新たな場所へ移動させる必要がある上に、ヤギを繋ぐロープが木にぐるぐる巻きになっていたり、強い力で頭突きされそうになることもあったからです。これらの作業を淡々とこなす子どもたちは本当にかっこいいと思い、感心しました。この後は塩釜に薪をくべたり、畑に種まきをしたり、サービス品を作ったり毎日その時必要なことに合わせて働きました。お昼になると、五島うどんを用意したり簡単な調理を任され、みんなでお昼を食べます。午後も少し働いて子どもたちが帰ってくると一緒に遊んだりします。子どもたちは本当に素直で伸び伸びと生活をしながらも自分達のやるべきことをやり、小学生にして大切な時間を過ごしているんだなと色々考えさせられました。子どもたちは自分の洗濯物は自分で畳み、自分の使った食器は自分で洗い、お風呂は自分達で薪を使って沸かし、8時30分には就寝する生活を送っています。子どもに火を扱わせるのは危ないからやらせないと言われがちですが、えんで生活している島留学生は違います。私たち大学生より当たり前のように素早く火をつけ、五右衛門風呂の沸かし方を教わりました。私がいつものように子どもたちの使った食器を洗おうとしたり、洗濯物を畳もうとすると、「自分のものは自分でやるから大丈夫だよ」と言われ、驚きました。自分の小学生時代と比べて少し恥ずかしくなりつつ、頼もしいなと子どもたちがどんな良い大人になるかなと、上から目線ではないですが楽しみになりました。食事中も日常のどんな時間もえんは賑やかです。眠い時も子どもたちは、いい意味で寝かせてくれません。あれしたい、これしたいという子どもたちの要望に対して、私が大変そうだと思うことも、ごりりんとちーちゃん(ごりりんの素敵な奥さん、えんでのお母さん)はやってみようと言います。あるとき、私はこんなに子どもと遊んでて良いのか、仕事になっているのかとごりりんに尋ねました。するとごりりんは「私たちはえんから出る機会がないから、外を知りたい。子どもたちが大学生と触れ合う大切な時間なんだよ。」と伝えてくれてこれで良いんだと腑に落ちました。ごりりんは塩の話になると顔色を変えます。目の前に広がる海水を汲み、風で水分を飛ばし濃縮させ、鉄釜で水分を飛ばしさらに濃縮させ、不純物を取り除き、24時間365日火を焚き続けます。できた天塩から細かい汚れを取り除き、梱包します。ごりりんの愛情たっぷりで味わいのある天塩はどれだけ待っていもいいほどの価値があると思いました。

今まで行ってきたアルバイトや今の就活スタイルとは全く異なる働き方を知り、選択の幅が増えました。仕事はこうでなければならないという固定観念が払拭され、もっと自分らしく自由に考えるのも大切だということを学びました。2週間の生活を通して、やはり自分には自然と調和して生きることが幸せなんだと確信しました。

この時期はえんでのイベントが盛りだくさんで書ききれなそうなので、次の項目でお伝えしようと思います。

体感3日

えんでの2週間はあっという間過ぎて体感は3日の気分です。この期間にはたくさんの出来事が詰まっていました。まず稲刈り、稲干し、脱穀、畑の種まき、漁港を見に行ったり、海ごみを使ったワークショップ、豆腐作り、台風、無人島旅(野崎島)、醤油仕込み、上五島一周ドライブ&観光、mycarナイトドライブ、さつまいも掘り、シュノーケリング、海ゴミ拾い、週1回のままりん(ごりりんのお母さん)ディナー、寺ヨガ体験、椿油搾り…。私にとって全てが初体験でした。自分達で育てたものを自分達で収穫し、手を加えて食べることには、実際にやってみないとわからない喜びがありました。私は初めから育てることができなかったのですが、これらを初めから育てて収穫できたらどれほどの感謝や喜びがあるだろうと胸が熱くなりました。えんは、上五島の中心地から少し離れているし、地域との交流が少ないのかなと思っていましたが、実際は真逆でした。地域の人とえんが繋がっているだけでなく、イベントに来る地域の人たちみんなが鎖のように繋がっているのです。彼らをつなげている「えん」の素晴らしさは一言では表せません。みんなで作り上げてみんなで喜びを分かち合うことができる環境で、人の自然に溢れる笑顔が見られます。毎日のご飯には、既製品にはない手作りの温もりがあり、味わいながらみんなで会話をします。

東京に帰ってきて、あの騒がしく笑いの絶えない子どもたちは今頃何をしているかな、みんな元気かなと気になってしまいます。それほど毎日が濃かったということです。

ごりりんの友人のイロイロさんには、初めて行く無人島に連れてってもらい、上五島の良さをさらに知ることができました。上五島一周ドライブにしても、そこで出会う方々はいつも温かく迎えてくれて何度も一生忘れないだろうと思いました。ヒッチハイクをした時には、以前はまぐりデッキで就業した時にであった方々に偶然会い、急遽ドライブをしました。なぜ短期間しかいないただの大学生にこんなに優しくできるのでしょうか。上五島に来て1日目からずっと考えていました。彼らは、上五島の良さを伝えたい、いいところだから隅々まで見せたい、来てくれて話してくれてこっちが嬉しいといつも語ってくれます。わたしたちの方が感謝したいのに。ごりりんとちーちゃんは毎晩、私たちに人生の糧となるお話をしてくれて、この暮らしに対する情熱を感じ、自分の中で揺らいでいたものがぼんやりと軸になるような感覚がしました。テレビもない、電波もないことに不自由さを感じることなく、自然と人の温もりの良さが溢れていました。

最後のメインイベントである椿油搾りでは、1日に30人(少ない方)の人がえんに来て、昔ながらの方法で何時間もかけて椿油搾りをしました。その日の晩御飯は、この前収穫したお米を炊いて、搾りたての貴重な椿油で収穫したさつまいもを揚げました。美味しさと喜びと幸せをたくさんの地域の方と共有し合って、騒がしい世の中から解放された気分で爽快でした。

最後に、旅のゴールについてです。旅のゴールはなんだと思う?ごりりんはこの質問の答えとして「帰ること」だと言いました。旅は帰れる場所がないと始まらないし、家があって旅になるということを聞いて、その通りだと思いました。

 

休日に行った無人島 野崎島
みんなで椿油搾り
最終日の記念撮影^^