奄美大島で気づけたこと
日本の観光地とホテルに興味があり、インターンを考えていました。せっかく夏休みを利用していくのだから、どこか遠い離島がいい、そんな気持ちで検索をかけ、偶然見つけたのが島キャンでした。
奄美大島という場所に関しても、正直テレビや観光ガイドで見かけるくらいの知識しかありませんでした。加えてインターンというもの自体が初めてで、どのような意識で働けばいいのか、ということも深く考えました。ですが、新しい出会いがあるという喜びも同時に抱いていました。そうして始まった2週間の中で、自分なりに感じたことを二つにわけて書きました。
一つ目は、リゾートホテルならではの悩みについてです。レストランの窓からは海がとてもきれいに見え、その景色を楽しみに来るお客様がたくさんいらっしゃいます。さらにお客様を増やす企画として、テラスでバーベキューをすることもできます。バーベキューの時はホテルが少し賑やかになって、私はその空気を楽しんでいましたが、館内のお客様の視界に入ってしまったり、騒がしくなりすぎたりします。私は、それが単純にマイナスだと考えていました。しかし、実際にお客様が「楽しそう」「バーベキューもできるのね」とつぶやいているのを聞いたのです。職員の方に、そのように思ってもらうことで次の来客につなげることもできるというお話も伺いました。様々なお客様の立場になって考え、見せ方を変えければならないのだと思いました。また、期間中台風も通りましたが、そうした悪天候の際の対応も想定しなければなりません。シティホテルとは考慮すべき点が違うのだと知りました。レストランは景色に限らず、料理もシェフが直売所から買ってきたこだわりの野菜を使用します。そのほかにも、展望台から客室の小物の柄に至るまで、奄美大島の自然や文化を見せる工夫がされていて、ホテルの方々の奄美大島に対する愛が伝わりました。
二つ目は、働くことを重く捉えていた私が驚いたことについてです。山羊島ホテルというひとつの職場の中で、多様な生き方をしている人たちに出会いました。島でブライダル事務所を経営することを決めた女性、沖縄のホテルから来たシェフ、政治家を目指す人、来年は東京の焼肉屋さんで店長を務めているかもしれない人。
なぜこんなにも自由なんだろうと、自分の中でずっともやもやしていましたが、そのもやもやは、送別会の席で隣になった、社長の息子さんの奥様とお話ししてすっきりしました。それは「この島の人はすぐ仕事変えちゃうからね。働き口もたくさんあるから、出て帰ってきても困らないしね。」という言葉を聞いたからです。もともと東京に住まわれていた奥様に「結婚を機に島に移り住んだことはとても勇気が必要だったのではないですか?」と伺うと、「何となく大丈夫だと思って深く考えずに来ちゃったー」と仰っていて、なんだか色々考えていた自分が恥ずかしくなってしまいました。職員の方々が妊娠中も働く奥様を気にかけていたり、政治家として活躍する方を応援したり、自由に生きることを皆が肯定している感じがして、とても素敵だと思いました。
一般的なインターンとは異なるということで、説明が大変だったり、どういう意識で臨んだらいいのか悩んだりもしましたが、島キャンだったからこそ気づけた働き方がありました。また、自分の中の働き方の選択肢をもっと増やしていいのだと思えました。
最初にお話しした島の方に、「奄美大島は沖縄と間違えられやすいからねー」と言われたのが印象に残っています。「沖縄は明るくて華やかなイメージだけど、奄美大島は暗い感じ、歌も暗いしね。」そう言われて、友達に今回の奄美大島でのインターンの話をしたときに「奄美大島って沖縄県の?」と聞かれたことを思い出しました。そのため、私は今回、沖縄県じゃない奄美大島、沖縄と「違う」奄美大島をひそかにスローガンにしながら様々な場所を回りました。
就業先が市街地に近いところにあって、自分が車の免許を持っていなかったこともあり、色々な地域をめぐることは難しいかと思われました。ところが、厨房の方のご実家が宇検村にあるというお話からドライブにお誘いいただき、ガイドしていただきながら南部も回ることができました。バナナの木が突然生えていたり、うけん市場には見たことのない野菜が並んでいたりと驚きました。同じ島の中でも名瀬の様子と宇検村の様子は全く異なり、村の中でも集落ごとに身内意識の強さに違いがあったり、移住してきた人が多く住む地域があることもお聞きしました。私は夏祭りが好きで、本当は参加したかったのですが、時期が合わず、お話だけ伺いました。そこでも集落ごとに踊りも異なり、夜通し移動して家を訪ねて回ったりするところもあると聞き、参加できなかったことをとても悔やみました。夜通し踊るところでは体力が続かないため、休憩しながら夜中と朝方で人が出たり入ったりしながら踊るそうです。聞いているだけで楽しそうな行事に、来年こそ参加しようと誓いました。
また、別の方にお聞きしたのですが、「名瀬の市街地は学生や若者が多いけれど、ばしゃ山村(奄美市笠利町用安)のほうにいくと高齢者が多いため【おばあちゃん飛び出し注意】の看板がある」というお話が印象に残りました。残念ながらバスの中から看板を発見することはできませんでしたが、優しさを感じることができてとてもほっこりしました。
自然に関しては、浜や海岸の様子も場所によって異なっているのが面白かったです。私は泳げないので海には潜りませんでしたが、北側の土盛海岸は限りなく水が透明で、最南端の海岸ではサンゴや軽石、シーグラスが打ちあがっているのを見ました。
ちょっとした看板や植物にも違いがあって、踊りも方言も違う。奄美大島という一つの島の中でも、こうした違いをたくさん発見することができました。華やかでなくてもそれぞれに個性があって飽きないと思いました。宇検村からの帰り道、「次に来るときは宿の心配しなくていいよ、村の人の飲み会にもぜひ参加してほしい。」そんな優しい言葉をいただき、奄美大島は派手に飾らない優しさがあるからこそ、外からきた人も安心して過ごすことができるのではないかと思いました。沖縄に行ったことがないので当初のスローガンはまだ達成できていないのですが、「違い」に注目したことで、奄美大島の中での違いに気づくことができました。
今回のインターンを通した私の一番の変化は、少しだけ甘え上手になったことです。というのも、私は人と会話をすることが好きで、初対面の相手でも話しかけには行けるのですが、頼る、甘えるということが苦手です。親しくなった相手であってもどこか気をつかって遠慮してしまい、困っていることや助けてほしいことが正直に言えないことが多いです。自分の中ではそこまで意識していない時ですら「そんなに遠慮しなくていいんだよ」「我慢しなくていいのに」と言われてしまうこともあります。それが少し悩みでもありました。
山羊島ホテルに就業していた期間中、お世話になった方がもう一人いました。それは、初日の散策中にたまたま見つけた鉄板焼きのお店「もりくま屋」の店主、森ななえさんです。彼女は私の祖母と同じ年くらいで、笑顔がとても素敵な女性です。偶然通りかかった私にとてもやさしく接してくださいました。お話の中で食事が未だであることを伝えると、手作りの島瓜の漬物をタッパーごとくださったり、ぜひ自分の車で観光につれて行ってあげたい、とその場でドライブが決定したり。別の日に改めて伺った際は、お家で焼きそばをご馳走になってしまいました。こんなにも見ず知らずの学生をもてなしてくれる人がいるのかと、驚きました。
彼女の優しさに触れてから、ホテルの方々とも肩の力を抜いてお話できるようになりました。休みの日や休憩時間に行ったところやこれから行ってみたいところを、聞かれてもいないのに私が勝手に報告するようになりました。すると、時間が空いたらどこかに一緒に行こう、というお誘いくださることが増えました。
思い返せば、私が遠慮していても、厨房の方々は容赦なく(笑)大量の賄を出していただいたり(リクエストも聞いていただいた)、雨が降りそうな時にでかけようとしていると、フロントから雨合羽を持ってきてくださる方も、一人で賄いを食べている私を見守ってくださる方もいました。常に誰かの優しさに甘えながら過ごしていました。無理にではなく、自然と甘えられるような環境が私にとってとても心地よかったのです。
質問をたくさんして、島の魅力を聞かなければという心構えでいましたが、皆様の温かさに触れて、結果として奄美大島の魅力に気づくことができました。
奄美大島は、私のようになかなか素直に他人に甘えられない人も受け入れてくれる、甘えさせてくれる人がたくさんいる場所だと思いました。