好きな場所がまたひとつ増えた夏
最近、ひとり旅をするようになって、ゲストハウスという存在がより身近になりました。安く泊まれて時に誰かと話したくなる私にはぴったり。そして、スタッフもお客さんもリビングに集まって過ごすところ、本やガイドブックや地図がたくさんあるところ、ホテルのように受付を済ませたら後は寝るだけのところ、本当に様々な形があっておもしろい。どこへ行っても同じような雰囲気がないのでいつも新鮮でした。
そのような経験から、泊まるだけでもおもしろいゲストハウスで実際に働いてみたらもっとおもしろいのではないかと思い、就業先をGOTOBASEに決めました。実際に働いてみて思ったことはとにかく自由だ!ということです。これがなかったらゲストハウスとは言えない、という要素は本当に一つもなく、全てがオーナーさんとスタッフさんの「これあったらいいな」で形成されていました。
例えば、どれだけ朝が早くても「いってらっしゃい」とお見送りすること、港や近くの居酒屋へ送迎すること、晴れた日にきれいな星空が見える場所に連れていくこと。これらがもしなくても、清潔なお風呂とトイレがあってぐっすり眠れるベッドがあるのだから全く不快な気持ちにはならないと思うのです。ですが、こんなことしてもらったらすごく嬉しい。最低限必要なもので終わらない。アメニティや設備、サービス、空間の使い方まで全てGOTO BASEのお二人の考えが直接現れていて、そしてまだまだ進化中でした。これからもその思いがひとつずつまた形になっていくのだろうなと思いました。私はこのようなことを考えながら日々の仕事をこなしていたわけですが、その中で「せっかく来たんだからいっぱい冒険しておいで」と言われ、いろいろなところへ出かけました。そして最初は島のことを何も知らなかった私が、道を覚え、島の雰囲気を感じ、素敵な景色をたくさん見つけ、気づいたら実体験をもって「ここ、私はすごくすきです!」とお客さんに対して言えるようになっていました。
また、就業期間中に台風が直撃したため、今後の予定をどうしようか迷っているお客さんがたくさんいました。その時オーナーさんやスタッフさんは、地図や天気予報や船の時刻表を見ながら、また、お客さん自身の事情(帰らなくてはいけない日や飛行機の時間だけではなく、絶対行きたいところや旅の一番の目的なども含め)を聞くのも忘れずに、様々な提案やアドバイスをしていました。これは毎日の暮らしの中で島のことや海のことをよく知っているからこそできること。そして、お客さんがゲストハウスの人を頼り助言を求める光景は、食堂が共有スペースとして十分に機能していて自然と集まる空間が成り立っているからこそあるもので、ゲストハウスをただ宿泊する場所で終わらせない自由な場所の作り方のひとつだと思います。たった2週間過ごしただけですが、その土地について知り、好きになること。外から来る方をお迎えするお仕事に絶対に必要な大事なことを知ることができました。
離島のガイドブックで紹介されていた「教会の多い島」。これが中通島との最初の出会いでした。それからいつか行きたいと思っていて、島キャンの就業先候補で見かけた新上五島町を検索してみたら、就業先があるのは中通島とのこと。かなりの期待とわくわくを抱いて島へと向かったのでした。離島が好きなのは海が好きだからで、その中でどんな島に行きたいかと考えたとき「美しい自然だけでは足りない(贅沢な話だけれど)」「独自の雰囲気を感じたい」という思いがだんだんと強くなっていました。そしてこの島(新上五島町)には、想像以上の歴史がつまっていました。それも、過去の出来事の証ではなく、ここにいる人々の暮らしにつながる歴史。集落の中に溶け込むように存在している教会は、日本史の授業で習うような重大な出来事の影響を確かに受けて、当時の人々が紡いできた歴史なのだと実感しました。
最初に心ひかれたのは、小高い丘の上にある教会から見る海です。なんてきらきらしていて深い青で美しいのだろうと思いました。教会へと自転車を走らせる途中で、海の向こう側に見える家々と教会のある風景もすごく好きでした。そしてなぜこんなにも素敵だなと感じるのかと思ったとき、私はこのような風景が何となく日本では見れないと思い込んでいたのだろうと気づきました。だからこそ意外で、見るたびに驚いて、結局2週間最後までこの新上五島町特有の景色に慣れることはありませんでした。美しい海や親切な島民の方やゆったりした時間の流れ、、、良いところはたくさんあって、それを感じる出会いも何度もあったけれど、何よりもこの歴史の存在を知らずに人生終えなくて良かった!と思います。
就業期間の前半は、中秋の名月と重なったこともあり、満月で星はあまり見えませんでした。普段の生活で月明かりを感じることはあまりないのですが、街灯がほとんどなくお店も早くに閉まってしまう島では、満月の日の明かりは本当にこれのおかげで外を出歩くことができる、と言っても過言ではないほど明るいものでした。後半になり新月の晴れた日に、オーナーさんが星空を見に連れて行ってくださいました。GOTOBASEで見る星も京都や地元に比べたらずっと多いのに「ここはあんまり見えないね」とおっしゃっていてますます期待が高まりました。
車を降りると、目が慣れるのを待つ必要がないくらいに数えきれないほどの星が輝いていました。もうプラネタリウムなんて行けないなという感じです。夏の大三角形、オリオン座、カシオペヤ座、土星、木星、いて座からおひつじ座、、、よくわからず何となく教科書の中の話だと思って覚えていた十二星座を、夜空で確認できるなど思ってもいませんでした。そして人生で初めて見た大きな天の川と流れ星。天の川は見えないもの、流れ星は流星群の日に時間を合わせなくては見れないものだと思っていました。これまでの常識が全部違って、感動でいっぱいで、どれだけ見ても飽きなくて、絶対に忘れたくない夜空です。