自然と都会が融合する島
私は学生最後の夏、今しかできないことをしたいという思いから島キャンに参加することを決めました。そして、都会ではできないような仕事をしてみたいという漠然な思いから、マングローブ公社で就業させていただくことになりました。
ここでの仕事はかなり大変です。10:00から1時間半ごとのサイクルでツアーをおこない、計5回あります。ツアーは1時間弱かかるため、休みは20分ほどしかありません。しかし、その20分もお客様への写真提供や見送り、次のツアーに参加するお客様に対しての説明やライフジャケットの準備等をします。
そしてここの事業所では、良くも悪くも上からの指示がほとんどありません。つまり、比較的自由に働けます!
ここで学んだこと、そして社会人になって大切であろうことは『目的意識』を持って働くことです。事業所の人は当然、お客様に楽しんでカヌー体験をしてもらい、マングローブの素晴らしさを感じてほしいと思っています。そして更には、観光客であるお客様に、もう一度来てもらうために様々な取り組みをしています。
例えば、ガイドではお客様の年齢層や出身から最近の時事ネタを話したり、マングローブという地域の特徴である満潮と干潮で行ける場所、見られる景色が全く異なることを説明し、もう一度来たくなるような気持ちにさせます。そして自分がツアーに出ていないときは、お客様に快適に過ごしてもらうために、雑草を刈ったり(奄美大島はすぐに天気が変わるため、雑草の伸びがとてつもなく早いです。)、ライフジャケットのシミを落としたりするなど、『お客様のために、今自分は何をするべきか』を皆考えながら働いています。
来年から社会人になる私はきっと、様々な境遇に立ち向かうと思います。そんな時にこの経験を活かして、誰のために今このような仕事をしているのか、だけは見失わないようにします。
正直、奄美大島は鹿児島県にあるものの、沖縄っぽい場所なんだろうな~と思っていました。確かに海や夕日、星空は格別に綺麗で「これぞ南国」と言わんばかりだと思います。しかし、奄美大島は様々なところが沖縄っぽくなく、奄美大島は奄美大島としてあり続けると感じました。
ここでは大きく分けて3つほど紹介します。一つ目は集落です。今でこそ山と山はトンネルで繋がっていますが、40年ほど前まではトンネルはなく、山を越えるのに歩いて3時間以上かかっていたらしいです。そのせいで集落ごとに隔離されていました。その結果、町でお祭りをしても奄美大島伝統の8月踊りは集落ごとにリズムから踊りの全てが異なります。私は集落ごとに踊りが異なることに驚いたのと、それ以上に半世紀以上の伝統を若者にも受け継いでいる姿を見て、言葉では表しづらい感動を覚えました。
二つ目は動物です。奄美大島と言えば、言わずもがなハブです。ハブを駆除するために、ハブハンターを全国各地から呼んだり、役所にハブを持っていくと3000円貰えるなど様々な取り組みをしています。私が聞いて一番驚いた駆除方法は外来種であるマングースを奄美に輸入しマングースに駆除してもらう方法です。マングースとハブは戦うと7割くらいの確率でマングースが勝つらしいです。(笑) しかし、この駆除方法は失敗しました。なぜなら、マングースはハブよりも国の天然記念物であるアマミノクロウサギを食べてしまうらしく、一時期クロウサギは急激に減少してしまいました。これを受けて、マングースを捕獲し元通りの島に戻ったらしいです。ハブと向き合って生活する環境は徳之島や加計呂麻島にもありますが、奄美大島以上にハブの駆除に力を入れている島はなく、これはこれで面白い環境だと思いました。(笑)
三つ目は人です。奄美大島の島民は島っぽくゆったりしています。そして、何に対してもあまり欲がなく、どこか諦めています。なんだかもったいないと思っていましたが、春樹(同時期に一緒に就業した島キャン生)の紹介で出会った叶さんやその知人に聞くと、なんだか理由が見えてきました。それは歴史が深く関係あります。奄美大島は薩摩藩に占領されていたり、アメリカに占領されていたりと、日本に返還されるまで独立していませんでした。そのおかげか、今、当たり前にくる生活をとても幸せに思っており、私がもったいないと感じることも恐らくそうは感じないのだろうと思いました。あ、私がもったいないと感じたことは些細なことです。例えば、こんなに独立できるチャンスがあるのに誰かのもとで働いていることや、島人ぬ宝のリズムは元々奄美大島原産なのに沖縄がうまく活用していたり、などなど。。
3週間という長いようで短い期間でしたが、事業所の方や島キャン生、島の人々との関わりで人の優しさに触れ、自分を見つめ直すことができました。私は島で生活してみたい、働いてみたい、都会ではできないようなことをしたい、という漠然とした思いから島キャンに参加しましたが、本当の目的は『自分を見つめ直す時間を作りたかった』からです。私はありがたいことにいくつかの企業様から内定をもらっていましたが、決めきれずにいました。どちらも良いところもあれば悪いところもあり、また業界も異なっていたため、差別化できずにいました。そこで懐の広そうな島の人々、客観的にみられる環境はきっと島が適しているだろうと思いました。島に来てみると、自分が想像していたよりも何十倍も笑顔で幸せそうに暮らしており、私に対しても優しく接してくださり、人生の先輩としてのアドバイスを聞きました。島で働いてみて、島の人々と触れ合ってここに住みたいと思いました。(笑)
島の人々は本当に優しく、そして自然にあふれるこの環境で早寝早起きする生活をして、ストレスなく長生きできそうだと思えました(笑)夕焼けや星空、海は何度見ても絶景で毎日これが見られたらなんて贅沢で幸せなんだろうと思いました。
将来、島へ移住することも視野に入れ、向こう10年の将来を考えて安定した企業に入るのではなく、やりがいと働く人に重点を置き就職先を決定しました。
将来、島に移住したいと思っている人は私含め多くいると思います。島に移住するためには『覚悟』が必要です。給料から経歴、人脈、生活など良くも悪くも後戻りしづらいでしょう。私は島キャン、島で生活することを通じて、観光客をもっと増やすことだけでなく、島に移住する人、長期滞在する人を増やす必要があると感じました。そうなれば、自然と金銭的な充実はもちろんのこと、新しいアイディアが取り入れられ、島がもっと活性化していくに違いありません。都会には都会しかないものがありますが、それはほとんど人工的なものです。島には人工的なものはほとんどなく、自然とできたものです。この環境、いわゆる生きた化石を持続させるために島の魅力をもっと発信していきたいと思います。