世界遺産登録間近の徳之島を一足先に体感してきました
近年、資本主義の成熟とともに分業がかなり進み、資格など、ひとつの職業を極めることが良いとされる風潮があります。特に理系ではそれが顕著です。ひとつのことを極める、というのはもちろん素晴らしいことです。そこから生まれでたものが今の時代を作り上げているのは間違いないでしょう。しかし、それは同時に一個人の可能性を閉ざしてしまっているような、そんな印象を受けます。就業先の方がこんなことを言っていました。
”木をひとつ取ってみても、知識がある人とない人ではそれに対する見方がまず違う。その見方はいろいろな引き出しがあってこそ。それがその人の人としての豊かさにつながる。”
その道のエキスパートになることはもちろん大事ですが、それに加えて、できる限りいろんなものに触れて、教養のある人間になりたいと思った瞬間でした。
島を語る上で外せないのは、やはり人の良さではないでしょうか。ご飯に誘ってくれたり、島を案内してくれたり、様々な物をおすそ分けしてくれたり。これらのことは当人たちにとって何かメリットがあるわけではないのに、見ず知らずの私にも親切にしてくれます。他人に何かを与えて当たり前なんですよね。首都圏なんかに住む私達の価値観では見返りや報酬をどこかで求めがちですが、島の人々はその感じが全くない。他県から島に移住した人たちに話を聞く機会が何回かあったのですが、この人の良さに衝撃を受けて、そして魅せられて移住を決めた、と口をそろえて言います。その人達も自分たちがそうされたからと言って、色々ともてなしてくれました。こういう行為は循環するんだと思います。都市でもこのようなサイクルができる生き方をしたいものです。
今、徳之島を含む奄美群島では来年の世界自然遺産への登録が噂されるなど注目されています。それに伴い観光地としての準備も島では進められています。具体的には、島を国立公園化したり、島の名所の整備を勧めたりといったハード面での準備です。ただ、この観光地化に際して行われている観光名所の整備の仕方が少し心配です。徳之島にはムシロ瀬と言う壮大な景色を有する岩場があります。そこも観光地化にあたり歩道が整備されたのですが、その整備の仕方が正直なところ本当にひどい。岩場の隙間等がむき出しのコンクリートで埋められ、荘厳な自然の合間に人工物がちらつきます。せっかくの景観が台無しになっていました。この工事は行政主導のもと行われ特に住民への説明もなかったようです。観光地化に向け整備を進めることは必要なのですが、その場所においては何が重要で、何を守らなければならないのかを整備面でも考えてほしいと思いました。こういったことはソフト面でも言えることです。目先の世界遺産登録、観光地化という事象にとらわれるのではなく、20年後、50年後の徳之島を考え、それに向けた策も講じていくべきではないでしょうか。