島の「あした」を考える
私たちの就業場所では、毎日の仕事は決まっていませんでした。私たちの仕事は、島の方のお手伝いをしながら、島により近い距離で、島のことを知ること。そんな状況で学んだのは、仕事は与えられたものをただこなしてタスク化してしまうのではなく、「誰かのため、島のため」にやるものであるべきだということです。例えば、木々の剪定。高齢者の多さや空き家があるなどの理由から、家の庭に生えた植物が歩道にまで伸びてきている地域の剪定をお手伝いしました。いつも多くの人が利用する歩道を、もっと気持ちよく利用してもらいたい。そのためには、若者と呼ばれる自分たちの体力を生かして、少しでも島の力になりたい。そんなことを考えながらの作業は、とても達成感があったし、実際に島の方にも、「手の届かないところや、普段時間をかけてやっていることだから、助かった。」「ありがとう」と言っていただきました。対価を求めるだけではなく、その仕事をする本当の目的はなんなのか、自分の使命について考えることが、充実度だったり、達成感につながるものであると学びました。
加計呂麻島には、全部で30の集落があり、島の方は集落のことを「シマ」といいます。隣のシマへ行くのには山を越える必要がありますが、そのぶんそれぞれ特色があって、例えば内海に面しているのか、外海なのかで波の具合や海の青さ、透明度、浜の砂にも違いがあります。私たちは二週間で、お手伝いと観光合わせて約半分のシマを見てきました。やはり、どこの島にも共通して言えるのは、人(特に子供)が少なく、高齢者が多いということでした。つまり、仕事をする層が薄いのです。…では、若者を呼ぶためにはどうするのか。「特産物であるタンカンの木を植えて、観光客を呼び込む。」「昔料理人だった腕を生かして軽食屋を経営する。」「島キャン生のように島に来た人との縁を大切にする。」…このようにシマの方は、シマの未来について考えて、行動に移そうとしています。どの集落であっても、加計呂麻島が大好きで、これからもこの島の文化や自然を継承していきたいと考えている人が本当にたくさんいるのです。この島に暮らす人たちが、加計呂麻島の一番の魅力だと、この島に来て、一緒に活動させていただいたことで知ることができました。
「とにかく人に話しかけて、多くの人から島の今後についての意見を聞き、ゼミで勉強している地方創生のヒントにする。」これは、島キャンに参加するにあたっての自分の決め事でした。特に中心的に聞いたキーワードは、観光について。島に行くまでは、綺麗な海と濃い緑の大自然を持つ加計呂麻島だからこそ、もっと観光客を呼び寄せるために魅力づくりや情報発信を行うべきだと自分は考えていました。しかし、島を理解しない人ばかりが来ることで島の文化が乱れてしまうということや、そもそも島の資源をビジネスにする(例えば、1時間3千円で船釣りツアーをするなど)というやり方をしたくないという意見がありました。私自身も二週間島暮らしをしていて、島の大自然と静かで落ち着いた空気感がとても好きだったので、「ここに観光客がたくさん押し寄せて、騒がれたら嫌だな。」と感じました。来てみないとわからないってこういうことだと思います。多くのヒントを得ることができたし、モチベーションが上がりました。また、交流することで、また来たいと思うような、人との縁もできました。これはこの先も大切にしていきたいと強く感じています。