島キャン実施レポート

岐路に立たされている徳之島・伊仙町

2017年夏 徳之島
伊仙町役場
2017年8月16日~8月29日
一橋大学 法学部  さいもん
変化を厭う島には、「よそ者」の視点が必要?
役場という大きな組織で感じたこと
伊仙町役場

 伊仙町役場では、未来創生課という部署にお世話になっていました。未来創生課は、企画課と地方創生推進室が母体になったもので、主な業務としては地方創生事業、ふるさと納税庶務、広報などを担当しています。
 島キャン生にはこれといった仕事があるわけではなく、事務作業を手伝いする程度だったので、自分が興味のある資料を読ませていただいたり、担当課にお話を伺いにいかせていただいたりといったことをしていました。また、外勤に同行させていただき、島をめぐることもできました。
 役場ではたらく皆さんの様子を見ていて感じたのは、職員ひとりひとりが自分の仕事に対してプライドと責任感を持って職務に臨んでいて、伊仙町をよくしたいという気持ちを持っているということです。
 しかしながら大所帯の組織には、組織としての問題も当然あります。迫り来る様々な課題に立ち向かい、よりよい未来を創っていくためには、ひとりひとりの意識が大切なのだなと痛感しました。

琉球弧としての徳之島、多産の島
広報の撮影でお邪魔した肉用牛共進会の様子

 徳之島は、鹿児島の南西380kmほどに位置する奄美群島の島です。島の面積は約247平方km、周囲は約80kmと比較的大きく、島内に徳之島町、天城町、伊仙町の3町あります。同じ島でありながら、町ごとに人々の気質が異なっていて、とても新鮮でした。
 徳之島は、元来琉球王国の支配下にあったことから、民謡に三線を使うなど、琉球文化の影響を強く受けています。その一方で、民謡の音階は薩摩と琉球を混ぜたものとなっており、離島ならではの独特な文化が築かれているという印象を受けました。またカムィ焼き窯跡や面縄貝塚などの文化財も多く、歴史的にも、さらには地理的・地質的にも大変興味深い島です。
 徳之島、特に伊仙町は、多産の町として知られており、合計特殊出生率は市区町村別で日本1位となる2.81を記録しています。しかしながら、島内に大学や専門学校がなく、島内の働き口が限られていることから、多くの若者が島外に流失してしまっており、伊仙町の高齢化率は35.4%(2015年)と全国平均の26.6%よりも9ポイントほど高くなっています。高齢化率は今後も上昇していくと予測されており、働き手(特に農家の後継者)の確保は喫緊の課題と言うことができるでしょう。

徳之島の魅力、徳之島のこれから
島の伝統料理

 徳之島は、「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部及び西表島」として、来年度にも世界自然遺産に登録されると目されています。世界遺産に登録されれば、多くの観光客が訪れることになるでしょう。しかし、それに向けた徳之島側の準備は十分とは言えません。島で生まれ育った人には、島にあるものが普通なので、語弊のある言い方かもしれませんが、島にあるものに対して見向きをしないきらいがあるように感じます。私たちが島にいる間に、青年会議所主催の小中学生向け島巡りツアーや東京の一流シェフを招いた食材探しがおこなわれていましたが、“よそ者”の視点が大切なのかもしれません。

 私が感じた島の魅力は「人」です。島の人々は優しく、おおらかで、大変良くしていただきました。
 しかし島は良くも悪くも閉鎖的で、島の掟、コミュニティ、しがらみが強く、よそ者の私たちがその中に入っていくのはとても難しいことだなと感じました。今回、インターンという形だからこそ、その中に多少なりとも食い込むことができ、島の人々と交流し、その優しさに触れることができたのはよかったと思っています。徳之島を訪れる人々が、島の人々と深く交流することができれば、徳之島のファンはますます増えていくのではないでしょうか。

島の美しい景色
島の美しい景色